教養講座:ヴェネツィア派で学ぶ、西洋絵画の主題
2017年3月8日、上野の東京都美術館で開催中の「ティツィアーノとヴェネツィア派展」(2017年1月21日?4月2日)に合わせ、「ヴェネツィア派で学ぶ、西洋絵画の主題」という教養講座を実施しました。教室での事前講義と、展覧会をセットにした内容です。
世界史教科書のイタリア・ルネサンスの項目では、通常フィレンツェを中心に記述されているので、「ヴェネツィア派」といわれても、生徒にとっては初耳だったかもしれません。しかし、線描・デッサンが重視されたフィレンツェに対し、ヴェネツィアにおいても、フランドルから伝来した油彩技法を極めた巨匠ティツィアーノを中心に、色彩感覚豊かな画家が活躍しました。また、ヴェネツィア派の色彩感覚には、ヴェネツィアの自然環境が影響しているとされます。
教室での講義では、「主題」を学べば、西洋絵画を鑑賞する楽しみが増える、というコンセプトのもと、聖書やギリシア神話のエピソードを中心に説明しました。今回の展覧会の絵を用いて主題を解説しましたが、「ユディト」、「東方三博士の礼拝」、「聖母子」、「聖家族」、「カナの婚礼」、「サロメ」、「マグダラのマリア」、「主の晩餐」(最後の晩餐)、「復活のキリスト」、それから展覧会でみることはできませんが、ティツィアーノの代表作として、ヴェネツィアにあるサンタ・マリア・グロリオーサ・デイ・フラーリ聖堂の祭壇画「聖母被昇天」について紹介しました。また、ティツィアーノは著名人の肖像画も多く描いていますが、今回の展覧会でも教皇パウルス3世の肖像画が展示されています。この人物は、芸術家のパトロンとなった「ルネサンス教皇」ですが、プロテスタントに対するカトリックの対抗宗教改革の文脈でも登場する、世界史上の重要人物です。
以下、講座に参加した生徒の感想・意見を紹介します。
〇以前からどこかのタイミングで、聖書を学ぼうと思っていたので、西洋絵画をきっかけに勉強してみたい。高1までで世界史が一巡したところで、歴史と文化のつながりをもっと深めていきたい。芸術で油絵をやっているが、「色彩」のヴェネツィアをこの目で見てみたいと思った。
〇今まで美術の結城先生のすすめで、4回ほど美術館に行ったことがあったが(カラヴァッジョ展など)、ただ絵を見るだけでその背景となった出来事や宗教的な意義は全く理解していなかった。今回の講座を受けて、少し美術を見る視点が変わった。
〇今まで自分が見てきた絵画の展覧会(レオナルド・ダ・ヴィンチ展、ボッティチェリ展など)では画家が何を描いているかについて考えてみるよりも、美術の技術的な点でみていたため、よく理解できていなかったことを自覚した。また、画家が自身の絵画に身のまわりの環境や風土を投影して描いていたことを知って、絵の見方が変わるとても良い機会となった。
〇キリスト教の拡大において、絵画も大きな役割を果たしていたことが分かった。その絵画を描いた画家は、おそらくそういう役割だけでなく、自分の見解も絵の中に描いたのではないかと思う。宗教的な主題で描かれた絵画が、官能的なものを含んでいることは新たな発見だった。
〇旧約・新約聖書の観点から、エヴァンゲリオンを解説して欲しいです。女性は子孫を残すべきであるから、処女であることが神聖視されるのは、生物としては矛盾していると思った。(←カトリックにおける聖母マリア信仰の話をしたから、この疑問がわいたのでしょうか。色々な考え方がありますが、完全に行為禁止というわけではありません。ただ、信仰によって婚前交渉はしない、ということはあります。)
〇絵画を、聖書・神話とまとめて話してもらえたので興味深かったです。神話の中でも取り上げられにくい、エジプト、インド、メソポタミアのあたりのこともやってほしいと思いました。
展覧会に行った生徒に、どの絵が印象に残ったかをきくと、「レダと白鳥」という答えが返ってきました。レオナルド・ダ・ヴィンチなども描いていますが、これはギリシア神話の主題で、実はトロイア(トロヤ)戦争の伏線となるエピソードです。自分の好きな絵が見つかったり、いろいろな知識が結びつくと楽しいですね。今後も、いろいろな展覧会を通じて、生徒の知的好奇心を刺激していきたいと思います。
(文責:教養講座担当 橋本)
高校卒業式
講座「本と私」の第2回を実施しました
3月7日(火)の13時より、「原田先生が語る数学の不思議と魅力」と題して、企画「本と私」の第2回を実施しました。どうしても図書館でのイベントは人文系の書籍を中心としたものになりがちですが、数学科の先生にご協力いただき、初めて理系のイベントを実施することができました。
講座は、ペレリマン数という不思議な数についての話から始まりました。
1桁の数で2乗して下1桁が元に戻る数は何か。
2桁の数で2乗して下2桁が元に戻る数は何か。
3桁の数で...
∞桁の数で2乗して下∞桁が元に戻る数は何か。
1桁の数は「5」と「6」。
それぞれ「25」と「36」となり、下1桁が元に戻ります。
2桁の数は「25」と「76」。
それぞれ「635」と「5776」となり、下2桁が元に戻ります。
では、∞桁でこの条件が成立する「数」はどのような数なのでしょうか。
この疑問について、加藤文元著『天に向かって続く数』の内容と関連させてお話頂きました。さらに「数」という言葉の定義についても様々な視点から説明して頂き、生徒たちも普段の授業で扱う数学とは一味違った内容に、とても興味深く聞き入っている様子が印象的でした。
今回の講座では、実際に筆算で計算をしながら数学の不思議さや魅力に触れたり、図書館にある数学についての本を閉架書庫の本を含めて紹介して貰ったりと、数学好きの生徒にはたまらない時間になったのではないでしょうか。
次回の「本と私」は2017年度の1学期に実施予定です。
これからの企画にもご期待ください。
文責:図書館運営委員会
投稿日時: 2017年3月10日 11:04 | カテゴリ: 図書館からのお知らせ |パーマリンク
教養講座:保育体験をしよう(2017年3月?)
2017年3月7日、昨夏の保育体験に続き、「社会福祉法人 恵寿福祉会 ゆうゆうきっず横浜」様で高校1年生の希望者を対象とした教養講座「保育体験をしよう」を実施しました。この体験講座には、地域交流・地域貢献、異年齢交流による情操教育・イクメン体験、職業教育(保育体験の参加者には、小児科医・教員など、子どもと接する仕事に就くことを志望する生徒も多い)といった、いくつかのねらいがあります。
また、ただ遊ばせてもらって終わり、というだけの体験にはしたくないので、保育体験に行く生徒に対しては事前指導を行っています。今回は3月6日に、家庭科の岡田先生と社会科の橋本で、幼児との接し方やマナーとして気をつけること、待機児童・保留児童の問題などについてレクチャーした後、絵本の読み聞かせを実演しつつ、生徒に練習してもらいました。
今回うかがった生徒は5人で、3・2にわかれて、2歳児クラス、3歳児クラス、4歳児クラス、5歳児クラスの各保育室を回りながら、保育体験をしました。講座終了後、参加した5人の生徒に書いてもらったアンケートの結果を紹介します。今回は絵本の読み聞かせにチャレンジしたので、その感想も入っています。
(1)この講座に参加しようと思った動機や、将来の職業などにつながるビジョンがあれば、具体的に教えてください。
〇2回目の参加。前回の体験でとても楽しくて、心に残ったので、今回も参加したいと思ったから
〇初参加。教師を目指す上で、保育体験をすることはメリットになると思ったから。
〇2回目の参加。シンプルに子どもが好きなので、参加させていただきました。また、直接つながるわけではないが、将来、(高校の)先生になりたいので、参考になればと思います。
〇3回目の参加。なぜ参加したいと思ったかというと、やはり子どもが好きだからでした。子どもとふれあい、同じ時間を同じ空間で過ごしたいと思って参加しました。
〇2回目の参加。前回とても楽しかった。子どもたちとのふれあいにおいて、一歩前進できると思った。(小児科医志望)
(2)保育体験を通じて、何を学びましたか? 幼児とどのようにふれあったか、どのような「遊び」をしたか、などについてふれながら、感想・意見を自由に書いてください。
〇前回よりも、幼児とのふれあい方が上手になった気がした。一人で何人もの子どもとふれあうことが出来て、とても楽しかった。「読み聞かせ」をもっとしっかりできればよかった。
〇会話をすると、子どもたちは簡単に話しかけてくれたので、会話を絶やさないようにした。また、ジャンケンや、あっち向いてホイなどの簡単な遊びも、交流を深める上でいいと思う。「読み聞かせ」の絵本をみんな知っていたが、それを踏まえた上で楽しんでくれたので、こちらも楽しむことができた。
〇一人一人個性があって、接するのが楽しかったし、2回目だったので、前回よりはうまくできたかなと思います。「読み聞かせ」は初めてしたのですが、あまり上手にできなかったので、もし次にやる機会があれば、頑張りたいです。
〇3回目の参加で初めて「読み聞かせ」をしたのですが、やってみると意外と緊張しました。しかし、しっかりとできたようで、子どもたちからは「楽しかった」、「面白かった」といった声が聞けて、嬉しかったです。
〇前回は、あまり上手く子どもたちに対応できなかったけれど、今回は一人一人の目を見て話せたので、少し成長した。5歳児クラスの椅子取りゲームで、子どもが負けた後に文句を言わずに帰っていったのが、正直だなと思った。
(3)次回以降の参加生徒に、注意を喚起すべきことがあったら書いてください。
〇絵本の「読み聞かせ」は声を大きく、はっきり、ゆっくりとしゃべり、絵が幼児に見えるようにした方がいい。
〇会話を絶やさないこと。
〇ただ子どもたちと仲良くするだけでなく、注意したり、静かにするときはちゃんとする。
〇しっかりと「正座」を主に行動するなど、子どもたちの安全を第一に考えること。
〇必ず子どもたちの目を見て、笑顔で話す。嫌な顔は絶対にしない。ゆっくり話す。
引率教員の観察と感想も書きます。絵本の「読み聞かせ」については、生徒それぞれで反省がありますが、前を向いて静かに聞いてくれる幼児の基本姿勢自体が、担任保育士の先生方の御指導の賜物である、と感じました。その他、さまざまな場面でフォローしていただいています。
個人的に印象に残ったのは、3歳児クラスの子どもたちの成長で(すでに多くの子は4歳ですね)、昨夏に6回訪問した私の顔を覚えていても、(4歳児クラスや5歳児クラスと違って)名前はほとんど覚えていないという印象だったのですが、一緒に給食を食べた子どもたちが、私の名前をきいてきて、覚えようとしてくれたことです。保育士の先生方はもちろん、同じクラスのお友達の名前もしっかり覚えてきて、さまざまな人・物に興味を持ってきているのだろう、と感じました。生徒諸君には、子どもたちの成長を感得しながら、自分自身の成長を見つめなおしてほしいと思います。そう考えると、1回きりではなく、継続して保育体験に参加することにも大きな意義がありますね。
それから、今回参加していた次期生徒会長はじめ、生徒会のメンバーもこの地域交流には関心を持ってくれていますが、生徒の側からも、こんなことにチャレンジしたい!という働きかけをしてくれることを期待しています。
(文責:教養講座担当 橋本)
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